2010年8月3日火曜日

『命と向き合うデザイン』 

 再生医学と制度−2



2009年の時点で製品化されている再生医療用細胞は皮膚・関節・角膜に限定される.日本では再生医療製品は「ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング」の自家培養表皮「ジェイス」が,重症熱傷用治療薬として2007年製造販売承認、2008年薬価収載された1件のみである.それに対して,世界に目を向けるとGenzyme BioSurgery社などは人工皮膚のEpicelと軟骨のCarticelを販売し,人工皮膚および軟骨関連でそれぞれ10以上の製品が販売されている.ここまで見てきたように,再生医学として研究された対象を再生医療製品として実際に医療現場で用いられるためには,いくつかのフェーズが必要である.1)まず,再生医学の研究対象を用いて医師の采配の下,臨床研究を重ね,2)その中から可能性のあるものを製品化し,治験に進める.3)治験を終え,承認された対象は一般的に使用されるため,商品化される必要がある.商品となって初めて薬価収載され,さまざまな医療施設において一般的な患者に使用されることになる.この流れはつまり,研究対象は産業化されなければ医療に活用できる価値を持たないことを意味しており,このこと自体は従来の医薬品や医療機器と同様である.しかし,再生医学ではその価値を持つための販売対象が,従来医療とは異なることになる.従来医療では,製造者は製剤・医療機器そのものを製品として販売しており,その製剤や医療機器が医療機関において目的の機能を果たすことが価値であった.しかし再生医療では,販売対象は製剤そのものではなく,製剤を医療機関内で製造するための医療機器になる.その医療機器が目的の製剤を医療機関内で製造することができて初めて価値を持つことになる.

・中辻憲夫, 中内啓光: 再生医療の最前線2010, 羊土社, 2010
・土屋利江編, 医療材料・医療機器—その安全性と生体適合性への取り組み—, シーエムシー出版, 2009