2010年8月5日木曜日

『命と向き合うデザイン』 

 人工心臓−2



人工心臓の歴史は,他の人工臓器に比べて長く,1937年にフランス人外科医のAlexis Carrelと大西洋単独無着陸飛行に世界で初めて成功したCharles Augustus Lindberghが「The Culture of Organs」を共同執筆し,その中で人工心臓の原型となる人工心肺の開発を記録している.その20年後の1957年,世界初の体内に埋め込む人工心臓,全置換型人工心臓の動物実験が行われた.執刀はWillem Johan Kolffの指導のもと,阿久津哲造という日本人が犬に対して行い,1.5時間の生命維持に成功した.そして翌年にはKusserrowにより補助人工心臓の最初の実験が行われた.現在でいう人工心臓は,体内への埋め込みを前提としているため,その原型と呼べるものは今から約50数年前に実験が始まったことになる.それから半世紀の月日が経っているが,未だ完全な形では実現していない.人工心臓はさまざまな分類方法があるが,最も一般的な分類は,ここで述べたように埋め込み方から行う分類であり,「全置換型人工心臓(完全人工心臓),Total Artificial Heart: TAH」「補助人工心臓: ventricular assist device: VAD,またはVentricular Assist System: VAS」の二つに大別される.前者は患者の自身の心臓を取り去り,その部分に人工心臓を埋め込むものであり,後者は患者自身の心臓を残置したまま,左心,右心,またはその両方のポンプ機能を補助する目的で心臓に取付けられるものである.主に疾患の程度によって適応になる方法が変わるが,特に近年になってからは,VASの使用目的が一部変化しており,VASを取り付けることによって,患者本人の心臓のポンプ機能を補助し,心臓の筋肉を休ませることで回復を促すというものがある.その後筋肉が回復すれば再びVASを取り外し一般的な生活をおくれるようになる場合がある.

・南淵 明宏, 心臓は語る, PHP研究所
・磯村 正, 治せない心臓はない, 講談社
・東嶋 和子, よみがえる心臓―人工臓器と再生医療, オーム社
・日本人工臓器学会, 人工臓器は,いま―暮らしのなかにある最先端医療の姿, はる書房
・許俊鋭, 斎藤明, 赤池敏宏: 人工臓器・再生医療の最先端, 寺田国際事務所/先端医療技術研究所, 2006