2010年8月6日金曜日

『命と向き合うデザイン』 

 人工心臓−3



人工心臓は主に次の5つの要素で構成されている.1)ポンプ部,2)動力部,3)制御部,4)電池部,5)検知部の5つである.人工心臓はこれらの要素を,体内または体外に設置し人工的な循環器としての機能を発現することができる.例えば,国立循環器病センターと東洋紡績社によって開発された「国立循環器病センター型(日本で1990年に厚生労働省認可を受け,1994年から急性心不全の治療として公的保険が適用)」では,ポンプ部を含むすべての要素が体外に設置される.そのため機器の整備は比較的容易に行えるが,患者が移動する際にはすべての機器を同行させなければならない.多くの場合,一人での移動は困難なため,看護師や家族の介助が必要となる.現在日本国内で公的保険が適用されている補助人工心臓は国立循環器病センター型のみである.つまり,すべての要素を体内に設置できるものはない.そのため,体表を貫通する管が一本以上必要になるため感染症の発生率が上がる.特に,国立循環器病センター型のようにポンプが体外に設置される場合,患者自身の心臓から血液を抜き取るための脱血管(インフロー・カニューラ)や人工心臓から再び心臓に血液を送り込むための送血管(アウトフロー・グラフト)が体表を貫通することになる.これらはそれぞれ太さが2〜3㎝と太く,人体への負担は少なくない.このようにポンプが体外に設置されるものを「体外設置型(体外式)」と呼び,体内,胸腔内にポンプを設置するものを「埋込式(体内式)」と呼ぶ.埋込式の中でもポンプのみを胸腔内に納め,制御部や電池部を携帯するものを「体内設置携帯型」と呼び,すべての要素を体内に埋め,経皮的に体内電池に充電するものを「完全埋込型」と呼ぶが,完全埋込型で実用化されたものは未だない.
・南淵 明宏, 心臓は語る, PHP研究所
・磯村 正, 治せない心臓はない, 講談社
・東嶋 和子, よみがえる心臓―人工臓器と再生医療, オーム社
・日本人工臓器学会, 人工臓器は,いま―暮らしのなかにある最先端医療の姿, はる書房
・許俊鋭, 斎藤明, 赤池敏宏: 人工臓器・再生医療の最先端, 寺田国際事務所/先端医療技術研究所, 2006