2010年8月20日金曜日

『命と向き合うデザイン』 

 目的−1



再生医学をデザイン医工学の一分野として,その関わりを定義します.特に細胞シート工学による心疾患の治療について言及し,産業化を目的とした実践的デザイン提案を通して,デザインが再生医療に関わっていく方法論の一つを示します.細胞シート工学は再生医学の一分野です.再生医学は主に基礎生物医学研究と生体組織工学の二つの柱で構成されており,それぞれもいくつかの分野に細分化されています.その中の一つにシート化した細胞を用いて治療を行う分野があり,生体組織工学の中でも細胞シート工学と呼ばれている.近年になり発達した分野であり,その基本技術は,対象から採取した細胞を培養皿上で工学的に培養し,シート上に精製した細胞を,損傷を与えずに培養皿から剥離するというものです.剥離した際に「足場」と呼ばれる細胞同士の接着タンパクを有したまま摘出できるため,患部に貼り付けることが容易です.従来,体外で培養した細胞は,まず人為的に作製した足場を患部に設け,その上に培養した細胞を播種する必要がありました.しかし,細胞シート工学の発達による足場の不要によって,手術がより容易になり,生体本来の接着タンパクで細胞を貼り付けることができるため,生体への侵襲が低くなりました.

・阿形清和他: 再生医療生物学, 現代生物化学入門7, 岩波書店, 2009