『命と向き合うデザイン』 

 新・人工心臓−8


連続流型ポンプは、高速回転によって発生する摩耗にともなう耐久性の問題と、回転軸周囲に血液を巻き込むことで生じる血液細胞破壊という二つの問題を有しています。特に細胞破壊はモーターの動作負荷を増大させ、モーター内部で想定以上の熱が発生し、人工心臓の筐体破損事故が発生する場合があります。その問題解決に成功した製品として、テルモ株式会社(本社:東京都渋谷区)の子会社であるテルモハート社(本社:米国ミシガン州)が2009年より日本国内での製造申請を行っている人工心臓がDuraHeartです。これは、磁気浮上型遠心ポンプ方式と呼ばれる方式を採用することで連続流型の問題を解決しています。具体的には遠心ポンプ内で回転しているインペラを磁気の力で浮き上がらせ、その状態で回転させる、というもので、回転に軸を必要としないため、1つ目の問題である回転軸の摩耗という耐久性、および2つ目の血液破壊と熱の問題の両方を回避しています。すでに欧州では2007年の2月にEU指令の求める要件を満たして認証であるCEマークを取得しており、同年8月から販売を開始しています。DuraHeartは体外に電池部と制御部を設けており、ケーブルを介して体内のポンプ部分と結合しています。電池部は約2kg程度で肩からバッグのようにさげることができるようになっています。日本人が中心に開発している人工心臓としてもう一つ、EVAHEART(株式会社サンメディカル技術研究所・東京女子医科大学・早稲田大学・ピッツバーグ大学共同開発)があります。こちらも連続流型の補助人工心臓ですが、電池部と制御部(コントローラ)は体外に設けています。こちらはビジネスキャリーのように引く形式をとっていますが、DuraHeart、EVAHEARTともに、体内における問題解決とともに、体外に設置される要素に対する配慮にも長けており、これは後述する人工心臓導入の目標実現に有効に働くと考えられています。

・南淵 明宏, 心臓は語る, PHP研究所
・小柳 仁, 心臓にいい話, 新潮社
・磯村 正, 治せない心臓はない, 講談社
・長山 雅俊, 心臓が危ない, 祥伝社
・桜井靖久: 医用工学MEの基礎と応用, 共立出版, 1980

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