『命と向き合うデザイン』 

 新・人工心臓−3


人工心臓の系譜の中には、もう一点重要なモデルがあります。大阪大学大学院工学研究科・医学系研究科の川崎和男(博士(医学))が提案した全置換型人工心臓のモデルです。川崎は国際的に活動しているデザインディレクターでもありますが、川崎が提案した人工心臓は、従来の製品が、主に「ポンプ機能」に注力した開発であったのに対し、実際の心臓に見られる「ポンプ機能」と「心機能」の連関に着目し、感情の起伏・興奮伝導系にも連関する形態デザインを想定したものです。その形態発想には、クラインボトルやダンスエッグといったトポロジー理論の基本形態を応用しています。特に、スターリング法則は、カタストロフィー理論での、鼓動方程式から、新たな「心機能」への導入を目的としています。「ポンプ機能」は、血流水冷により、モーター駆動での発熱の軽減を図り、更に各臓器に付随する分散した配置方式を検討しており、「心機能」は、交感神経との連関性を図るコンピュータ制御回路の実装を検討しています。こうした電気・電子回路の駆動には、超小型の原子力バッテリーの開発が不可欠であることも提示されています。形態検証を実現するために、「光造形システム」による形態造形を運用し、課題としては、「やわらかい素材=タンパク質的な新素材」開発が求められています。

・artificial heart:川崎和男展, アスキー社, 2006
・artificial heart:川崎和男展 展示記録集, アスキー社, 2006
・Design Anthology of Kazuo Kawasaki, アスキー社, 2006

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