『命と向き合うデザイン』 

 新・デザインについて−6


バウハウスは1919年に開校し、1933年にナチスによって閉鎖させるまでの14年間、主に「教育運動・造形活動・工房活動」の3本を軸として進められたデザイン活動です。設立時の構想は「工芸や芸術を統合するものとしての総合芸術」でした。イギリスから端を発した産業革命から、時代を経て続いてきたデザインの歴史において、その一つの到達点という位置付けが非常に強い活動です。これまでのさまざまな活動の要素・要因が集約した形になっています。このバウハウスを設立した初代校長のヴァルター・グロピウスは、ドイツ工作連盟を起こしたヘルマン・ムテジウスの弟子にあたります。そして同時に、アール・ヌーヴォーの初期に活躍したヴァン・デ・ヴェルデから強い影響を受け、バウハウスを創設することになったのです。ドイツ工作連盟とアール・ヌーヴォーは、造形的な要素や規格化・標準化という点において対立した思想であったと認識されていますが、ヴァン・デ・ヴェルデ自身、ドイツ工作連盟に在籍し、活動した時期があります。この当時の中心的な二つの思想がグロピウスに影響を与え、バウハウス創設に至ったということは非常に興味深いことです。さて、そのバウハウスですが、一般的には「機能主義・合理主義」としての考え方が強く、製品設計・生産管理などを一つの「システム」としてとらえるという意味での、デザインの基礎がつくられたと言えます。それまでにも、さまざまな物品をシステムとして管理する発想は既に始まっていましたが、バウハウスでは家具から室内空間・建築・集合住宅・都市という範囲までのすべてを、一貫したシステムとみなし、統合することを目的としていました。

・Alvin Toffler; The Third Wave, Bantam, 1984
・Nikolaus Pevsner; Pioneers of Modern Design, From William Morris to Walter Gropius; Revised and Expanded Edition, Introduction by Richard Weston

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